経済回復のカギは「60代以上」個人金融資産の6割、1200兆円超を持つシニア世代のお金の使い方 識者が見解

北村 泰介 北村 泰介
画像はイメージです(siraanamwong/stock.adobe.com)
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 消費経済アナリストの渡辺広明氏と経済アナリストの馬渕磨理子氏がこのほど、都内で開催された「2024年度の消費と金融のトレンド予測」と題したパネルディスカッションに参加した。その現場で、日本経済において「60代以上の定職リタイア世代がカギになる」という見通しについて、それぞれの意見を交換した。

 共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社「ロイヤリティ マーケティング」(本社・東京)が今年2月に20-70男女2894人を対象にした「現在の生活についての意識調査」の結果を元に行われ、TOKYO FMの番組「馬渕・渡辺の#ビジトピ」でコンビを組み、フジテレビ系「Live News α」のコメンテーター仲間でもある両氏が語り合った。

 渡辺氏は「GDPの約55%を占める個人消費は日本経済の空気を変える大事なところ。日本人は節約家なので、個人金融資産がかなり溜まっていて、2141兆円あるんですよ。そのうちの半分が預金です。『老後は2000万円ないと暮らせない』と騒がれましたが、実はお金を持っている人はたくさんいて、さらに伸びている。その個人金融資産の6割を占めるのが60代以上なんですよ。その定職リタイア世代がカギになると思っていて、その世代の消費を進めなければ日本の個人消費は上向いていかない」と説明した。

 今回の調査によると、「保有資産額」の項目では男女とも全体で「保有資産がない」が約20%以上いたが、男性60代は「5000万円以上」が9・9%と1割近かった。内閣府によると、60~64歳の就業率は73%と、60代前半は資産がある上で〝現役世代〟だ。さらに、それ以上の年代も、日本の平均寿命からすれば、今後もさらに消費生活が続いていくことになる。

 渡辺氏は「日本はシニア層がお金を使わなければ駄目な国なんです。GDPの約55%を占める個人消費が上向くと日本経済が回っていく。しかし、シニア世代の方たちがお金を使わないようにもなっている。平成の30年で『デフレ節約』が全てだと慣らされているので、そこの意識を変えていかないと日本経済は上向かない」と課題を挙げた。

 馬渕氏は「年金世代の高齢者の方がなかなかお金を使いづらいということですが、そこにはインフレも一部あるのではないかと思っています。(定職をリタイアして)現金収入の給与が入ってこなくなると、かなりインフレを意識して節約傾向に入ってくると、現場におられるその世代の方たちもおっしゃっています。ですので、年金生活の方には厳しいのかもしれません。年金以外の収入を得られるようになることも重要なテーマになっています」と提言した。

 渡辺氏は「旅行に行く60代以上の人たちが増えてほしい」とも語り、馬渕氏も「そうですね、金融資産も多く、時間の余裕もあるわけですので、旅行という形でも消費に向かえばいいですが…」と同意しつつ、「やはり、『先々の生活の不安』が強くあるのではないかと思います」とも指摘した。

 シニア世代にも富裕層はいるが、一般的に、経済面で不安を抱える人は少なくない。馬渕氏は「人生100年時代なので、60歳の方が80歳にかけてNISA(少額投資非課税制度)をやるという方も私の周りには多いです。富裕層だけでなく、幅広い職業の方、年齢やお立場の方々に対して、正しい金融知識を届けることが大切だと思います」と付け加えた。

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