小学生の通学時の荷物が重く、心身に負担を感じる問題を解消するため、ランドセルを従来の主流だった革製から布製に移行する動きが近年、起きている。老舗メーカーがこのほど、小学1年生の親1200人を対象に「布製ランドセルの認知度に関する調査」を行った。その結果を元に識者の見解を聞いた。
調査を行ったのは水着や通学用バックなど学校用品を扱う創業80周年のフットマーク株式会社(本社・東京)。2023年12月に実施して以来、今年3月に行われた2回目の調査では、布製ランドセルの認知率が前回の48・8%から55・7%と初めて過半数を突破した。
詳細をまとめると、「布製ランドセルの認知」は23年調査の48・8%から55・7%に上昇。同社では「カラーバリエーションやデザインの多様化、素材の選択肢の広がりを背景に、ランドセル選びの意識が変化しつつあります。布製を選んだ理由として『革製は重たいから』が18・2%から31・7%に増加しており、革製の重たいイメージが選択要因の一つとなっている可能性があります」と説明した。
逆に革製を選んだ理由として「ランドセルといえば革製だから」と回答した割合が前回の43・1%から今回は29・2%に激減。「ほかに選択肢がないから」という理由も12・7%から8・7%に減っており、慣習に従うよりも自主的に比較・検討して選択する傾向に変化していることが分かった。
この点について、小学生のランドセルの重さに関する調査を実施してきた大正大学の白土健教授は「かつて『丈夫で長持ち』=(イコール)『革製』というイメージだったものが、布製でも耐久性、機能性、デザイン性に優れた商品が増え、同等の信頼が得られるようになったことが背景にある」と解説した。
ランドセルを購入する際の判断や行動を「ラン活」とした上で、同社では「ラン活の経験が二極化し、『早期行動層』と『情報過多で迷う層』に分かれる傾向にある」と指摘。入学1年前の4月以前に早期購入するケースが16・7%ある一方、「選択肢が多すぎて迷った」(34・3%)という層とに分かれる傾向が見られた。白土教授は「上(年長)の子でのラン活経験がある保護者は迷いにくい一方、初めてのラン活ではママ友からの『早く買わないと好きな色がなくなる』といった同調圧力も影響しており、情報過多と焦り中で戸惑う保護者が生まれている」との見解を示した。
さらに興味深いのは、ランドセル購入時の「最終支払い者」が祖父母(前回の53・4%から42・3%に減少)から親(前回の44・2%から55・1%に増加)にシフトしたということ。白土教授は「少子化により、『入学祝い』という慣習そのものが変容しつつある可能性があります。また、ランドセルの選択肢が多様化し、価格帯の幅が広がったことで、親自身が主体的に選んで購入するスタイルが定着してきているとも読み取れる」と指摘。「最終決定者」は「子ども自身」である割合が前回の82・4%から83・3%と高水準を維持していることも含め、同氏は「ランドセル選びが祖父母主導の贈り物から、親と子が選ぶ主体的な買い物へと変化しつつある」と付け加えた。
また、「ランドセルへの不満」として、「水筒が入らない」(21・8%)、「容量が足りない」(12・6%)、「整理整頓がしづらい」(10・0%)、「錠前が使いにくい」(8・8%)など複数項目にわたることも判明。ランドセルに入らないため、水筒を斜め掛けで持ち運ぶ小学1年生は約半数(48・3%)に上った。
こうした実態を受け、白土教授は当サイトに「水筒を斜め掛けで通学すると、バランスが悪くなることと転倒の際に思わぬケガが生じる危険があり、収納できる背負い式カバンが適しています。また、収納時には水筒から水漏れしないようフタがきちんとしまっているか、パッキン(※隙間に挟む密閉用シール等)がちゃんと装着されているかなどの確認が必要です」と、水筒をカバンに収容することの意義を説いた。
いずれにしても、布製ランドセルの認知率が過半数を超え、実際の購入率はまだ少ないとはいえ、前回調査の2・8%から3・4%に増加。白土氏は「かつて珍しかったものが時代と共に当たり前になってくように、消費文化は変わります。自治体の無料配布でも布製が増えており、今後、購入率が大きく伸びていく可能性がある」と予測した。
ランドセルを通して、世相や消費者の意識の変化が見えてくる。2027年度の入学期は約10カ月も先になるが、既に新たな「ラン活」は始まっている。