Aさんは夫が家事を忘れたり時間に遅れたりするたびに、「なんで忘れるの?」と理由を追求せずにはいられなかった。夫が「ごめん、次から気をつける」と謝っても、「気をつけるって具体的に何を?どうやって?」とさらに詰め寄った。このやりとりは日常的に繰り返されていたため、いつしか夫は精神的に不安定になっていき、Aさんとの会話を避けるように。
こうしたすれ違いから抜け出すために、Aさんはどのように夫と向き合えば良いのだろうか。恋愛心理学者・心理カウンセラーの吉野天海さんに話を聞いた。
終わりの見えない質問が相手を追い詰める…
ー本人は筋の通った話し合いのつもりでも、相手には「詰問・支配」として受け取られてしまうのはなぜですか?
1番の理由は、男女の「察する力」の差です。男性は海外の研究論文から立証されているように、科学的に言葉の裏の感情を読むのが少し苦手であるため、夫が悪気なく「次から気をつける」とその場を収めようとしても、妻には本気度が伝わりません。
そのため、安心したくて「具体的に?」と明確な言葉を求めてしまうのです。妻が理由を聞くこと自体は悪くありません。問題なのは、夫がとりあえずの謝罪で逃げ、夫婦の「対話のキャッチボール」が途切れてしまうことです。
また、夫はもしかたらADHDの傾向が少なからずあるかもしれず、その脳の特性を理解した対応をする必要があるかもしれません。
ーそもそも、自分が納得するまで説明を求め続けてしまうのはどういった心理でしょうか?
一見「夫を思い通りにしたい」ように見えますが、本音は「対話が終わってしまう不安」である可能性も高いです。人は「価値観などの深い話」をすると気まずくなると避けがちです。しかし心理学の研究では、勇気を出して深く語り合ったほうが、夫婦の絆はグッと深まることが分かっています。
夫は「責められている」と逃げ、妻は不安から追う。お互いに「深い対話」を怖がって避け、うわべだけのやり取りになっているのがこの悪循環の正体です。
また、妻の立場からすると、関係性が近くなると、相手は自分と感覚が同化していて当然という無意識の心理に陥ることがあります。これが働いていると、自分とまったく同じ価値観であるべきというところから、この態度になってしまうこともあります。
ーAさんのように配偶者に理論詰めをしてしまう傾向がある場合は、なにからはじめれば夫婦関係を修復できますか?
まずは短い会話を交互に繰り返す「ターンテイキング」のテンポを作ることです。妻は「私は困っているけど、どう思う?」と夫が話すスキマを作り、夫も「今回はこれが理由。次はこうするよ」と誠実に言葉を返すことが大切です。
また、話す時はスマホを見ず、相手にしっかり視線を向けるだけで、相手の真意を読み取る力はグッとアップします。「逃げずに、交互に、相手を見て話す」。これが信頼回復の第一歩です。
また、お相手がADHDである可能性も加味して、その特性を活かすことを意識したり、逆に自分の価値観が全てと思い込んで、相手に押し付けていないかという視点でも立ち止まってみることが大切です。もし自分たちだけでの対応が難しいときは、カウンセラーなどの専門家を頼るのもおすすめですよ。
◆吉野天海(よしの・あみ) 株式会社SMARTBRIDAL代表取締役社長/JPSAアシスタントプロスピーカー/恋愛心理学者・心理カウンセラー
結婚相談所SMARTBRIDAL代表。「MBA(経営学)・心理学・AI・オンライン」を融合させた科学的根拠にもとづく戦略的婚活をサポートしている。全国数千社ある結婚相談所のなかで、0.19%未満の成婚マイスターの称号を取得。「離婚しない幸せな結婚」を理念に掲げ、さまざまな境遇の人の婚活をサポートしている。