医療・介護現場のコミュニケーション環境の改善に取り組む株式会社ケアコムはこのほど、看護師・准看護師255人を対象に「認知症患者からのカスタマーハラスメントに関する実態調査」を実施、結果を公表した。
ハラスメントの経験頻度は、「ほぼ毎日」が26.9%、「週に数回」が27.7%で、半数以上が週に数回被害にあっていることが分かった。
ハラスメントの内容では、「暴力(88.2%)」と「暴言(83.2%)」が突出して多く、セクシャルハラスメントが56.7%で続いた。
ハラスメントの影響として、回答者全員(100%)が「精神的ストレス」を挙げた。さらに、52.5%が「身体的負傷(処置が必要な実害)」を経験。62.2%は「職務意欲の低下(辞めたくなるなど)」を訴えている。
被害を受けても何も行動しなかったという回答者に理由を尋ねたところ、「認知症だから仕方ない(85.3%)」という諦めが最多だった。一方、「上司に不備を指摘される」も20%を超え、組織が職員を守るのではなく、職員の「忍耐」に依存して現場を維持している実態が浮き彫りとなった。
自由記述では、「病院の外なら警察沙汰になるような暴力も、病院内では『病気による症状』の一言で片付けられる。加害が許される治外法権の場所になっている(30代・病院勤務)」「管理者は現場で対応していないから、事の重大さを理解しようとしない。単なる『面倒なインシデント』として処理されることに絶望を感じる(40代・介護施設)」「医師は被害に遭わないからか、内服調整や転院検討に消極的。すべてはナースが我慢すれば済むと思われている(50代・病院勤務)」「『この人のために』という奉仕の心を利用して、ハラスメントを我慢させることが今の看護現場のスタンダード。これでは若いスタッフはすぐに辞めてしまう(50代・病院勤務)」「家族は病院に預けっぱなしで、面会にも来ない。それなのに何かあれば恫喝してくる。医療従事者への敬意が全く感じられない(40代・病院勤務)」など、悲痛な声が数多く寄せられている。
認知症患者のケア現場では、看護師が「患者への献身」と「自身の安全確保」という困難な二律背反の課題に直面している。「病気だから仕方ない」という受容の精神はケアの基本だが、それが現場の課題を個人や特定の組織に閉じ込める一因となっている側面もデータから示唆されている。看護師個人の問題にせず、発生した事象をチームや組織、社会全体で共有し解決策を模索する環境改善が必要だ。