大きな期待を胸に入社したはずなのに、いざ働き始めると職場のスピード感についていけない。入社から1カ月、「自分はこの会社に合っていないのではないか」と深刻に悩む新社会人が増加する。
一方で、「わずか1カ月で辞めるなんて、世間体が悪いのでは?」「次の就職に響くのでは?」という不安が足を止め、決断できずに自分を追い込んでしまうケースも少なくない。今の苦しさをどう捉え、納得感のあるキャリアに変えていくべきか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞いた。
ー入社して間もないのに「会社が合わない」と強く感じてしまうのはなぜでしょうか?
入社1カ月というのは、学生から社会人へと役割が変わり、求められる責任や行動基準がガラリと変わる時期です。そのストレスは本人が思っている以上に大きく、「自分が弱いのでは」と感じてしまう人も少なくありません。
「合わない」というモヤモヤの背景には、仕事そのものへの適性だけでなく、生活リズムの変化や、新しい環境への緊張による疲れが隠れていることもあります。まずは「何に違和感を覚えているのか」「何が苦痛なのか」を言語化してみることが、状況整理の第一歩になります。
ー「踏みとどまって我慢すべき」か「決断して辞めるべき」か、その境界線はどこにありますか?
一概に線引きできるものではありませんが、ひとつの視点として「その負荷が成長に伴うものか、それとも消耗の側面が強いか」を見極めることが挙げられます。
例えば、スキルを身に付ける過程で生じる負担は、成長に必要な筋肉痛のように、一時的に大変であっても後の選択肢を広げる可能性があります。一方で、明らかに不適切な労働環境や継続的な心理的負担がある場合は、無理に耐え続けることで心身への影響が大きくなることもあります。
また、「この環境で働き続けた先の自分をイメージできるか」という観点も大切です。今大変でも、その延長線上に納得できる姿が見えるのであれば、取り組む価値を見出せる場合もあります。
ー「短期離職」は、その後のキャリアに悪影響を及ぼすのでしょうか。
短期離職については、業界や企業によって受け止め方に差があるのが実情です。一方で、第二新卒採用など、若手のポテンシャルに注目した採用の機会が広がっているのも事実です。
そのため、短期離職という事実そのものよりも、「なぜその選択に至ったのか」「その経験から何を学び、次にどう活かそうとしているのか」といったプロセスが問われる傾向にあります。
例えば人間関係が理由であっても、その中で自分なりにどのような工夫や行動を取ったのか、そして次はどのような関係性を作りたいのか、といった一貫した説明ができるかどうかが重要になります。
ー「辞めたい」と思った時、最後に一度だけ試すべきことはありますか?
大切なのは、「1人で結論を急がないこと」です。
信頼できる上司や先輩に現状を共有することで、見えていなかった選択肢が見つかることもあります。配置や業務内容の調整など、小さな変化で状況が改善するケースも考えられます。
一方で社内での相談が難しい場合は、キャリアの専門家など第三者の視点を取り入れることも有効です。複数の視点で整理した上での結論であれば、「続ける」「離れる」いずれの選択であっても、自分なりの納得感を持ちやすくなります。
「どちらを選んだか」以上に、「どのように考え、選択したか」というプロセスが、その後のキャリアを支える土台になります。
◆七野綾音(しちのあやね) キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。