スパイク・リー監督(68)は、映画「マルコムX」の製作中「うつ」になったという。アフリカ系アメリカ人の活動家を描いた1992年公開の同作に、給料の半分を費やし無一文になったそうだ。
同作の予算と上映時間を巡って映画スタジオと口論になったことでも知られるリー監督は「ハリウッド・リポーター」に「あの映画は、ワーナー・ブラザースがポストプロダクションの段階でボンド会社に映画を引き継がせ退いたことで、酷い目にあった」と語った。「母親が亡くなった時を除けば一番落ち込んだ時期かもしれない」と衝撃の大きさを表現。「自分の給料の半分が映画につぎ込まれた。一文無しだったよ」と振り返った。
俳優デンゼル・ワシントンが活動かのマルコムXを演じた同作について、当時、リー監督は「情熱的なプロジェクト」と捉え、資金をやり繰りするためショービジネス界の仲間たちに声をかけたという。「自分が読んできた本の中で最も重要なものが、中学時代に読んだアレックス・ヘイリィの『マルコムX自伝』だった。毎年読んでいた。あの映画をやるって決まってから、『私はマルコムの弟子にならなくてはいけない』と話し、彼のことを考え続けた。強烈な衝撃だったよ。リッチなアフリカ系アメリカ人を知っていたからリストを作って、お金を得たんだ。ワシントンD.C.の起業家だったペギー・クーパー・カフリッツ、トレイシー・チャップマン、ジャネット・ジャクソン、そして私が最初に訪れたビル・コルビー。プリンスもだ。誰かの所に行くたびにお金をせびっていた。オプラ・ウィンフリーもね」と次々と名前を挙げた。
さらに「リストの最後2人がマジック・ジョンソンとマイケル・ジョーダンだった」とNBAの超大物の名前も。「あのブラザー2人がどれだけ競争心があるかは知っていたから、ブルックリンのブラザー、マイケル・ジョーダンにマジックがどれだけ寄付したかを漏らしたんだ。そしたら『わかったよ』って言ってドカンさ。そのお金でクルーを再雇用することができたよ」と競争心を煽って出資させることに成功したと明かした。「(ニューヨークの)ハーレム(地区)で記者会見を開き、『アフリカ系アメリカ人の皆が無条件で贈り物をしてくれた』って世間に発表した。翌日にワーナー・ブラザースはボンド会社からこの映画を引き取り、再び資金を提供し始めたのさ」と戦略が見事に功を奏したと語った。