なつかしいオモチャが復活した。〝板ガム〟を引き抜くと「パチン!」と金属のフレームが指に当たる玩具。大阪市にある玩具総合問屋「株式会社 甲山屋」がリニューアルした「ガムパッチン」の販売を始めた。4代目・甲山屋代表取締役社長の甲山洋史氏(43)は「これから量販店さんやインターネットで販売されたり、イベントなどで登場してくると思います」と話した。
〝平成版〟の反省を生かした。他社のメーカーが販売を停止したことで、得意先の業者から要望を受け、2012年に「ガムパッチン」の商品名で販売。元祖のメーカーなどによる〝昭和版〟は痛さの刺激が強かったため、指の当たる部分にビニールテープを巻くなどして安全性を考慮しすぎた結果、徐々に下火となり、2016年に販売停止となった。甲山社長は「あまり痛くないような形式を考えたんですけど、お客さんにとって〝本来、こうあってほしいな〟と思う部分を残してあげないとダメだというのが分かりました」と振り返る。
その後も新しく復活を望む声は届いていた。レトロなオモチャとしてメディアに取り上げられたり、得意先の業者に問い合わせが来たと聞かされたりしたことも。「業者さんから『復活するなら、ちゃんと復活して』と」。ネットやSNSなどでも懐かしんだり、欲しがったりする声もあった。「ビジネスになるのでは」と再販に踏み切った。
〝令和版〟はゼロから作り直した。バネの強度、指に当たった時の音の大きさ。板の厚みをガム板と同じするなど、クオリティーにもこだわった。バネは10種類の候補から3種類に絞り込んで決定し、指に当たる部分はウレタン素材に変更。試作品を作り、社長や社員の家族ら20組ほどがモニターとなった。「どれがいいとかをやってもらいました。大人だったらそんなに痛くないけど、子どもに渡すと〝意外と痛いよ〟と。時間がかかりましたね」。ある程度の痛みを感じながらも、安全に遊べるようにと試行錯誤した。当初は今夏に販売する予定だったが、調整しているうちにずれ込んでしまった。
さらに商品のパッケージにあるQRコードをスマホで読み込むと、画面上にサルのキャラクターが登場。ガムパッチンの板ガムを引き抜くと連動して、画面上のサルがジャンプして、どこまで行けるかというゲームもできる。「ガムパッチンの遊びをしつつ、みんなで競えるようなミニゲームですね」。仲間同士でも楽しめるような工夫もほどこした。
まずは10万個を生産し、全国の玩具卸問屋に卸している。「ある程度、普及したら次のパッケージのデザインに変更するとか。そこから先は品質を落とさないということと、次の切り口を考えないと」と先を見据えていた。他のレトロ玩具の復活計画も進行中だ。「5アイテムぐらい残っていまして、改めて作ろうかなと」。懐かしさの中にも新しさを求めて、挑戦を続けていく。