暗く深淵な世界観を描いた"幻想画"が話題 「自分の描く絵は人に好かれない系統と自覚」で呪縛から解放

中将 タカノリ 中将 タカノリ

暗く深淵な世界観を描いた"幻想画"がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは

「自分の描く絵は人に好かれない系統なんだと自覚出来たときに初めて自由に描ける様になれた。」

と自身の創作について語った、黒猫フランベルジュさん(@ayakasi_k39)の投稿。

数々の優れた幻想画を手がける彼だが、そのモチーフはカラスや黒猫、骸骨などどこか闇を感じさせるものばかり。

個性が貴ばれるべき絵の世界においても番人うけする作風を良しとする風土があるのかもしれないが、彼は自身の作風を「人に好かれない系統」だと認識するすることで、そういった束縛から解放され現在の境地に至ったわけだ。

今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは

「自身で描きたいモノを続けて描いてゆけば良いと思います。私はこの鴉の絵画はシックな感じがすごい良く表現出来て素晴らしい作品だと思います。」
「凄く素敵です
他の絵も拝見しましたが細部まで何処にも手を抜かず描きたいものを表現する熱意が溢れていて静かなのに力強くて白黒でも鮮やかに見えました
自由に描けるようになられた時にまた枷をかけるようで言って良いのか悩みましたがとても とても好きです!!」
「絵柄全く違うのに、河鍋暁斎の鴉を思い出した
素敵」

など数々の共感と絶賛の声が寄せられている。

黒猫フランベルジュさんにお話を聞いた。

中将タカノリ(以下「中将」):絵を描き始めた経緯や、そもそも表現したかったことは?

黒猫フランベルジュ:絵自体は子供の頃から好きで描いていました。美術の授業や美術部で学べる技法は勉強して、展覧会もよく出品してましたが、自分が一番描きたいものがよく解ってなかったんです。

学生時代はそれでも良かったのですが、大人になってから「さぁやろう」と思っても解らない。画力も低かったので、デッサン練習しながら図書館や本屋に足繁く通って、様々な美術の画集を読み耽ってました。

そんな時に「ブリューゲルの死の勝利」という作品や19世紀のヨーロッパの挿絵文化に出会い大変な衝撃を受けました。「これだ!私のやりたいのはこっちの方だ」とやっと判ったのが27歳の頃でした。

特に挿絵文化の時代からはE.V.ボイルやラッカム、ハリー・クラーク、リチャード・ドイルなどに影響を受け本格的に制作活動を始めました。叙情的で物語性も強く一遍の詩の様な美しさのある絵を目指しつつ、自分の内にある言葉にならない気持ちを絵で表現したかったです。これは20年経っても変わらない気持ちです。

中将:ご自身の作風が人に好かれないと認識した経緯は?

黒猫フランベルジュ:今は言われなくなりましたが、活動初期は絵柄が古いとか下手だと言われたり好意的な反応が殆どなく、肉親からはこんなもんと仕事とどっちが大事だと叱責されたり。ただそれは言い換えれば自分の画力に説得力もなかったからだと思います。

色んな展覧会にも参加しましたが大して成果もなく描いた絵も売れない。主催からは「売る努力あるのか!」と叱責されたり。私の絵は誰にも好かれないのだなと落胆し、段々嫌になり病気もあって2012年辺りから5年ほど断筆してました。当時はもう描くつもりはありませんでした。

でも因果というか5年も経つとまた描きたくなりまして。最初は練習で一点描いて、その次に描いた作品がそれまで自分が追い求めていた幻想世界を、かなり難産でしたが描くことができました。この時ものすごく達成感を得たというか、嬉しくて嬉しくてそれまでの悩みが消えたんです。ようやく「誰にも好かれなくてもいいから自分が思うがまま自由に描こう」と強く決めました。

中将:その認識に至る以前と以後で違いは感じますか?

黒猫フランベルジュ:決めたあとは肩の力がうまく抜ける様になり、絵を描く気持ちよさや楽しさをとても実感しております。以前は変に完璧主義なところがありましたが、今は多少の失敗は気にしなくなりました。

中将:今回の反響についてご感想をお聞かせください。

黒猫フランベルジュ:今回反響のあった鴉の絵はそんな活動最初期に描いたもので、実はかなり昔の作品です。実はこれまでも何度かツイートにのせて発表はしていたのですが、何故か今回バズることになってしまい、正直不思議な気持ちと申し訳ない気持ちもあります。

ただそうは言っても他の過去作品もそうなのですが、ようやく多くのネットユーザーさんたちから好意的な言葉をかけてもらえるようになりました。本当に有り難い気持ちでいっぱいです。

◇ ◇

黒猫フランベルジュさんはSNS上でさまざまな作品を公開中。またSUZURIのウェブショップも人気のようだ。誰にでも好かれはしないであろう黒猫フランベルジュさんの絵だが、そこに宿るパッションはまさに芸術。少しでも多くの人にその世界観を堪能していただきたいと思う。

黒猫フランベルジュさん関連情報

Twitterアカウント:https://twitter.com/ayakasi_k39
SUZURI「黒猫†フランベルジュのお店」:https://suzuri.jp/kuronekoflamberge

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