工事現場で働く職人や現場監督などにまつわる、“業界あるあるネタ”を描いた作品『工務店の日報』(@KOBA_co_osaka)が人気を集めている。業界を知る人なら思わず頷き、専門外の人でも「そんな世界があるんだ」という反響を巻き起こし、今やInstagramでは、フォロワーが10万人に迫り、コメント数が100件付くことも当たり前の活況ぶりだ。
作者は、国内外で活躍するデザイナー兼イラストレーターの福田雄一さん。中学校時代からの友人であり、現役の工務店社長松本氏との協力体制で仕上げていくというこの異色作は、どのような経緯で誕生したのか。話を聞いた。
◆本職の方が読んで「あるある」という共感を大切に
友人である工務店社長の松本氏の発案からスタートしたというこの作品。最初は、「内装の作品集のようなやつ?」と思ったという福田さんは、作品誕生の経緯を次のように話してくれた。
「2人で飲んでいる時に、『そろそろネタも溜まってきたから、いつか本を出したいと思ってんねん』と松本が話し出しまして、『えっ、内装の作品集的なやつ?』と返すと、『いや、ちがう。工事現場あるある集的なやつ』との意外な答えが返ってきました(笑)。その時は笑い話で終わったのですが、本気で本を出版できるんじゃないかと、淡い夢を抱きながら漫画で発表することにしたというのが経緯になります」
ということでスタートした『工務店の日報』。作画は福田さんが担当するが、ストーリーはなんと工務店に勤める方々が中心となってネタ出しをするという。「基本的にストーリーのネタ出しは、工務店の従業員が出すものが多いです。ただ私も、日本で飲食店などのお店のデザイン設計・工事をいくつか経験しているので、その体験も結構あります。すべて実話ベースで描いてはいますが、4コマに収めるため編集や脚色はもちろんしていますよ」
この作品の大きな魅力は、これまで類型が無かった“工務店あるある”というジャンルを開拓したところ。そして、専門外の人にも楽しく読んでもらえるところだ。その点について、福田さんは「使用する用語が専門的になりすぎないようにしているなど、細かいところはいくつかございます。ただ、基本的には本職の方が見て『あるある!』と思ってくれるプロ仕様を目指しておりますので」と話す。その強いこだわりや、コアな“あるある”が共感力を呼び、より多くの人を巻き込む作品になっているのだろう。
そして最後に、今後の目標について語っていただいた。「(筆者のドラマや映画化なども目標ですか?という質問を受けて)ドラマや映画化の予定はございませんが、それが実現するのが夢です。年明けには単行本が出版できるように現在調整中ではあるのですが、まだ詳しいことは決まっておりません」とのこと。SNSでクスクスという笑いを届けてくれたこの作品が、単行本化されたときはまた違った魅力を描いてくれるだろう。今後も期待したい。
■■『工務店の日報』のInformation
▶Instagram /
https://onl.sc/sKE7GGc
▶Twitter /
https://onl.sc/rX8XwgE
▶福田雄一さんProfile /
1979年3月生まれ。大阪府出。2001年 大阪芸術大学、美術科卒後、3年近くデザイナーとして企業に勤め退社。その後フリーランスでデザイン、イラストの活動を始める。2009年頃からポルトガル・リスボンに拠点を移す。2014年 から2021年末までリスボンで自らデザイン・プロデュースした日本食店「tasca Kome 」を経営。2020年 初めて単発の漫画を描き、漫画賞を受賞。漫画に可能性を感じ2022年2月からSNSで漫画『工務店の日報』の投稿を始める。2023年 漫画「工務店の日報」の書籍化予定。