上司との雑談の中で、見解の相違によって気まずい雰囲気になった時、あなたならどうする?お笑い芸人の話題など、仕事や生活に直接影響を及ぼすようなネタでなくても、そこを端緒に人間関係に亀裂が生じることもある。「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、その打開策をお伝えする。
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【今回のピンチ】
オフィスで上司と雑談。中堅のお笑いコンビについて「最近、面白くないですよね」と言ったら、上司がムッとしつつ「そうかな、俺はけっこう好きなんだけど」と……。
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「そうだね、面白くないよね」と返ってきたら、上司と距離が縮まった気がする、うれしいひとときになったはず。しかし、思わぬ落とし穴が待ち構えていました。
そもそも、お笑い芸人だけでなく、タレントやテレビドラマ、食べ物などの話題で、いきなり否定から入るのはあまりにも迂闊(うかつ)。こういう事態を招くリスクがあります。しかし、時間を巻き戻すことはできません。
「いや、面白くないですよ。なぜなら……」と、面白くない理由を説明し始めるのは、もっともやってはいけない対応。ますます上司を不機嫌にさせるだけです。
かといって「そ、そうですよね、面白いですよね。いや、120点だったのが110点になったかなって意味で……」と意見をコロッと変えつつ弁解を始めるのも、けっこう最悪。まず間違いなく「信用できないヤツ」のレッテルを貼られます。
しょせん好みの問題なので、対応を間違えなければ、そのコンビを好きか嫌いかで人間関係に深い亀裂が入るわけではありません。ここで逃げてしまったら悪い印象が尾を引きます。まずは「すみません。やっちゃいました」と素直に謝りましょう。その上で、激しい後悔の念を表情や仕草で表現しつつ、反省の気持ちをあえて言葉に出します。
「ああ、俺はこういうところがダメなんだよな。でも、相手が○○さんでよかった。こんなことで怒る人じゃないから」
反省に続いて上司をさりげなく持ち上げ、怒りがふくらまないように先手を打っているところがミソ。上司は、ちょっと呆れつつ態度を軟化させるはずです。
そのタイミングで「○○さんは、あのコンビのどっちがよりお好きなんですか?」「どのネタがいちばん好きですか?」などと尋ねましょう。「けっこう好き」なコンビについて語れた満足感で、その前段階のこっちの失言は忘れてくれるに違いありません。