「台湾有事」はウクライナ次第か「中国は前例として観察、ロシア勝てば可能性も」グレンコ氏が指摘

深月 ユリア 深月 ユリア
写真はイメージです(and4me/stock.adobe.com)
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 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからまもなく半年になるが、依然として先行きが見えない状況だ。一方、中国が台湾周辺での軍事演習を続けており、日本にも緊張感が走っている。こうした不穏な世界情勢を受け、ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者、アンドリー・グレンコ氏に話を聞いた。

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 長引くウクライナ戦争。ウクライナ東部で親ロシア派が一方的に独立を宣言している「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」をシリアに次いで、北朝鮮も7月13日に国家として承認する声明を発表した。そして、開戦当初は「核の使用」をちらつかせていたロシアのプーチン大統領だが、8月1日、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議向けの書簡で、「核戦争に勝者はおらず、そのような戦争を決して起こすべきではない」と主張している。

 しかし、欧州最大の原発、ザポボリージャ原発でロシア・ウクライナでも両軍の激しい戦闘が行われていて、万が一、原発が爆撃されたら欧州全体に被害が及ぶことになる。さらに、同2日、米・民主党のペロシ下院議長が台湾を訪問したことで、中国軍が台湾を取り囲むような大規模な軍事演習を続け、台湾を威嚇していることから、「台湾有事」の可能性もささやかれている。ますます、混とんとする世界情勢はどこに向かうのか。筆者はウクライナの国際政治学者、アンドリー・グレンコ氏にインタビューした。

 ー現在の戦況状態はどのようになっていますか。

 「ここ数カ月の戦況は膠着(こうちゃく)状態で、ロシア軍は南部に集中していましたが、西側からの武器供与が増えて、ロシア軍の勢いが弱まっています。なので、ロシア軍は西側を脅す為にザポリージャ原発を攻撃しました」

 ードネツクやルガルンスクはクリミアのようにロシアの傀儡(かいらい)地区になりますか。

 「シリアや北朝鮮が主張しても影響なく、すべては戦況により決まります」

 ーロシアは核兵器を使用しないと言っていましたね。

 「プーチンはいつも嘘をつきますので、戦況が不利になれば使用する可能性は否定できないでしょう。しかし、通常兵器でウクライナを制圧できると思っている限り、使用しない。今年は使わないでしょう。独裁国家の核の脅威に屈せず、西側の核保有国がロシアをけん制するしかないと思います」

 ー「台湾有事」は起きると思いますか。

 「ウクライナ戦争次第です。というのも、中国はいま前例としてのウクライナ戦争の状況を観察しています。ロシアが勝ったら、『独裁国家が好き勝手できる』という前例になるので、台湾有事はありえるでしょう」

 ーその場合、アメリカは米軍を派遣しますか。

 「バイデン大統領はかねて台湾を助けると言ってます。バイデンは思ったことを正直に言う大統領で、主義を大事にしているので出すでしょう。逆に主義より実利を重視するトランプ(前大統領)なら出さないでしょうね」

 ー台湾有事を防ぐことはもちろんですが、早くウクライナ戦争も終戦するとよいですね。

 「そのためには、西側からの武器と、独裁国家の脅しに屈しないという断固した姿勢が必要ですね」

 独裁国家が武力による脅威で好き勝手できるか、民主主義が守られるか、今まさに世界はその瀬戸際にある。グレンコ氏が指摘するように、平和を取り戻すには、理想論のみならず、断固として立ち向かう姿勢も必要だろうと、筆者は考える。

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