ウクライナ軍が『黒魔術』使用の報道 専門家は「めちゃくちゃです」ロシアのプロパガンダと指摘

深月 ユリア 深月 ユリア
写真はイメージです(Subbotina Anna/stock.adobe.com)
写真はイメージです(Subbotina Anna/stock.adobe.com)

 ウクライナ軍がロシア軍に対して「黒魔術」を使っているというロシアの報道があった。荒唐無稽な内容であるが、その背景にあるものは何だろうか。占い師として霊視も行なうジャーナリストの深月ユリア氏は「プーチン信者のロシア兵による落書きの可能性」と推察した。さらに、同氏がウクライナの国際政治学者に取材したところ、ロシアによるフェイクニュースの実態などが明かされた。

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  ロシア国営通信社のRIAノーボスチによると、「ウクライナ軍は、ロシアによる侵攻を食い止めるために『黒魔術』を使っている」という。同報道によると、 ロシアが侵攻中のルハンスク(ルガンスク)地方のトレヒズベンカ村のウクライナの軍事基地で、黒魔術儀式のシンボルが発見されたという。ロシアのカルト研究者のエカテリーナ・ダイス氏によると、「円の左端に混乱を象徴する印」「剣や戦いを象徴するヘブライ文字の『ザイン』がドイツ語で書かれ」「ファシストの象徴が組合わさり」、このシンボルは「悪の勢力の魔術の紋章である」という。

 果たして、本当にそうだろうか。

 魔女占い師でもある筆者がこのシンボルを霊視すると、プロの呪術師が実行するほどの大きなエネルギーは感じられないが、〝低級な生き霊の恨みの念〟を感じた。このシンボルはウクライナ軍ではなく、ロシアのオカルト好きな、プーチンを熱狂的に支持する兵士による落書きではないだろうか。

 というのも、プーチン支持者たちの中には、プロパガンダの報道によるマインドコントロールもあって「プーチンは、悪魔を信仰する闇の勢力と戦っている」と本気で信じている人々がいる。

 そして、「Z」は戦争支持の象徴としてロシアで用いられていて「ZAIN」の頭文字である。またプーチンはゼレンスキー大統領を「ヒトラーと同じファシスト」だと批判していて、ラブロフ外相も5月1日に「ウクライナ侵攻の目的は非ナチ化」だと主張した。

 筆者は、5月9日のドイツに対する戦勝記念日にロシアが勝利するよう、ロシア兵が黒魔術の儀式を行ったように感じる。

 ロシア側のメディアはこれまでも、自国が生物兵器を開発しているのを「ウクライナが生物兵器を開発している」とし、ロシア軍が人道回廊の避難を妨害しているのに「ウクライナのせいだ」と、ロシアが行っている暴挙をウクライナになすりつけてきた前例もある。

 ウクライナの国際政治学者アンドリ・グレンコ氏に取材したところ、今件も「フェイクニュースの可能性が高い」という。

 「昨今のロシアのプロパガンダがますますおかしなことを言うようになりました。『ウクライナは悪魔崇拝をしていて、赤ちゃんを十字架にはりつけした黒魔術儀式を行っている。子供を生け贄(にえ)にして食べる』…など、めちゃくちゃです。しかし、ロシアのプーチンの崇拝者は信じる可能性があります」(グレンコ氏)

 いずれにしても、「黒魔術」の効果はなかったようだ。

 戦勝記念日の式典で、プーチン大統領はいつもより早口で「軍事作戦は唯一の正しい選択肢だった」と、ウクライナ侵攻の正当性を主張し、勝利宣言や戦争宣言はなく、これまでの態度と比較すると随分と弱腰だった。式典には親ロシア派のベラルーシのルカシェンコ大統領もカザフスタンのトカエフ大統領も来訪せず、プーチンはますます、国際社会の中で孤立をしているということだろう。

 グレンコ氏は「プーチンは過去の栄光は語りませんでしたが、現状を正当化する意図の演説をしたということは(侵攻を)諦めるつもりはないということ。戦争を終わらせるには、より強い制裁と武器支援が必要です」と指摘する。

 経済制裁は効いていて、ロシア軍も物資不足に陥り、戦闘不能になっている部隊が続出しているにも関わらず、プーチンはまだ諦めないのか?馬鹿馬鹿しいフェイクニュースを流してまで続ける無意味な戦争が一刻も早く終わることを願う。

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