オーディションで性的被害 志願者に盗撮や関係要求、わいせつ行為も 筆者も体験、証言者を直撃

深月 ユリア 深月 ユリア
写真はイメージです(Tinnakorn/stock.adobe.com)
写真はイメージです(Tinnakorn/stock.adobe.com)

 映画のオーディションを装い、応募してきた20代女性への強制わいせつ容疑で、警視庁池袋署は無職の50代男性容疑者を逮捕した。逮捕容疑は今年1月、都内のマンションの一室で女性にわいせつな行為をした疑い。容疑者は映画プロデューサーと称していたという。また先日には、50代映画監督による複数の女優への性的加害が報じられ、今月25日に予定されていた監督作が公開中止になるなど、社会問題化している。女優でジャーナリストの深月ユリア氏が自身の体験も踏まえ、性的被害に遭った男性、性的関係を打診されたという女性の証言を報告する。

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 「映画のオーディション」とインターネットの掲示板で俳優志望の女性を公募し、「演技指導で自分が相手役になる」といって女性とキスなどをした容疑者が強制わいせつの疑いで逮捕された。オーディションでラブシーンを演じるというのは映画がラブストーリーの場合はあることだ。しかし、問題はその映画企画が実在していたか、女性を集めるための口実だったかという点だろうが、今後の捜査で判明するだろう。女優・モデルなど芸能活動をしている筆者は、芸能界に入りたての頃、オーディションを巡る事件に巻き込まれたり、見聞きしてきた。その一部を紹介しよう。

 【レースクイーンオーディションでの盗撮】

 15年ほど前だが、インターネット掲示板でレースクイーンの募集があり、筆者がオーディションを受けて帰ろうとした際、オーディションを主催していた審査員が3人、警察に逮捕、連行された。更衣室に監視カメラが設置されていて、主催者たちは架空の「レースクイーンオーディション」でレースクイーン志望の女性たちを集めて生着替えを盗撮していたのだという。

 【自称・芸能プロダクション代表が俳優にわいせつ行為】

 筆者の知人の若手俳優X氏も被害にあった。東京・青山にあるという自称・芸能プロダクションの代表者は、X氏によると「外見が70歳くらいの男性」で、「全国で配給される大手映画のメインキャストにキャスティングする」「ただし、映画資金をいま集めていて、数か月だけお金を貸して欲しい」と依頼してきたという。言われるままに金を貸したが、その金が戻ってくることはなく、プロダクションは音信不通になりオフィスもなくなった。さらに、X氏は経済的な被害のみならず、わいせつ行為も受けたという。同氏は「その高齢男性に自分の下半身を触れと言われました。役も欲しいし、金も返して欲しいし、仕方なく従いました。今でも思い出すと吐き気がします」と打ち明ける。

 【レースクイーンオーディションでの性的関係の要求】

 筆者の知人のモデルから聞いた話だ。「あるレースクイーンオーディションで『スポンサーとレーサーとの◯◯◯◯◯は大丈夫ですか?』と(複数の相手との強制性交を受け入れるかどうかを)公然と聞かれました。でも、そうして事前に聞くのはまだマシな方で、中には何にも聞いてないのにセックスの道具にされる女性もいます。レースクイーンを辞めたくないから、反抗できないんですよね」。3年ほど前の話だ。現在もそのチームで同じやり方が続いているかは分からないが、スポンサーが「枕営業」を誘うケースはレースクイーンに限らず、周囲で聞いている。

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 以上は、一部の特殊な例だったとしても、体験者の証言は具体的で、筆者も実際に盗撮の現場にいた。芸能界に夢を見る男女がだまされ、利用されて犠牲になる例は絶えない。時々、明るみになる芸能関連の「闇」は氷山の一角に過ぎないのである。一般社会ではセクハラ、モラハラになる行為も、オーディションの度に「自分が選ばれなければならない立場」というプレッシャーがあると泣き寝入りになってしまう。しかし、例えそれで選ばれても長続きはしないので、芸能界を目指す人たちには安売りすることなく、しっかりとした「自分軸」を持ち続けて欲しい。

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