動物虐待で傷ついた軍鶏を保護 賭博の「闘鶏」問題 業者や参加者は「伝統文化」と主張

深月 ユリア 深月 ユリア
くちばしが異常な状態で切られた軍鶏(画像提供・アニマルライツセンター)
くちばしが異常な状態で切られた軍鶏(画像提供・アニマルライツセンター)

 軍鶏(シャモ)を傷つけた動物愛護法違反(虐待)容疑で、千葉県警柏署が1月13日に柏市内の養鶏場を家宅捜索し、くちばしを切られたり、目や頭につつかれたような痕があるなどした軍鶏を押収(保護)した。同市は環境改善への行政指導をする方針だが、こうした動物への虐待が社会問題になっている。女優でジャーナリストの深月ユリア氏が、警察と現場に立ち会った動物保護団体と、闘鶏イベントに参加経験のある男性から双方の見解を取材し、その実態を報告する。

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 ご存知、日本では賭博はご法度である。しかし、隠れ蓑で行われている賭博の一種が闘鶏だ。闘鶏とは、鶏同士を闘わせてどちらが勝つか金をかけるという賭事だ。

 今年1月にNPO法人「アニマルライツセンター」と動物愛護団体「クックハウス」は警察の協力の元、千葉県の闘鶏場で38羽のオスの軍鶏を保護した。闘鶏場での軍鶏の飼育状態は非常に不衛生で、保護した軍鶏たちも傷だらけだった。

 「闘鶏場には約60羽の軍鶏が木の檻に入れられて並び、その軍鶏の何羽かは頭全体が傷を負い、目がなくなっており、頭に縫い跡があり、クチバシが異常な状態で切られて、骨が曲がっている鶏もいました。死体も放置されていて、檻の中は大変不衛生な状態でした」(アニマルライツセンター)

 「負傷した軍鶏の適切な治療や保護はされていませんでした。頭の傷は獣医ではない素人が糸で縫った形跡があり、これはともすればその不適切な治療が元で傷が悪化するでしょう。排泄物が堆積し、岩のようになっていて、軍鶏の骨や死体が放置されていました。軍鶏はダニに侵されていました。ダニとシラミに血を吸われ続けられれば、衰弱しますし、発熱することもあります。また、衰弱した個体にはより多くのダニが寄生しますので、より衰弱が激しくなります。ガリガリで今にも死にそうな子もいました」 (アニマルライツセンター)

 愛護動物を戦わせて傷を負わせること、飼育している愛護動物が傷を負って手当しないのも動物愛護法違反でもある。では、闘鶏業者や参加者たちはどんな気持ちで参加しているのだろうか。過去にフィリピンで闘鶏イベントに参加したことがあるA氏は語る。

 「誘ってくれた知り合いが自分の『自慢の軍鶏が闘う』ことを名誉なことであるように自慢していました。試合はどちらかの軍鶏が動かなくなるまで行われ、負けた軍鶏は食べられます。参加者は50~60人くらいいて、闘鶏は伝統文化であり、『悪い』と思っている人はいませんでしたが、集団心理もあるかもしれませんね」

 「どうせ食べるなら、一思いに屠殺しても、闘鶏の試合で死んでも同じだ」という意見もあるかもしれない。しかし、試合の度に傷つきながら、恐怖におびえながら生きる鶏たちにとってはまさに生き地獄である。闘鶏が「伝統文化」だとしても、軍鶏に壮絶な苦しみを強いて闘わせるのは決して品の良い「文化」とはいえないだろう。

 なお、現在、アニマルライツセンターでは保護した軍鶏たちの里親を募集している。適正な環境で飼育できることが条件になる。

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 【アニマルライツセンター 軍鶏の預かり兼里親募集フォーム】

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeKBdoPNJVR1Zms4ODmooyPCIWbQsLE1UV3OCfaJ3EGsJCAZQ/viewform

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