ウルトラセブンの欠番「第12話」スペル星人が怪獣系だったら なべやかんが語る「封印映像」

北村 泰介 北村 泰介
膨大なコレクションに囲まれ、封印映像についても語ったなべやかん=都内の自宅
膨大なコレクションに囲まれ、封印映像についても語ったなべやかん=都内の自宅

 特撮ドラマ「ウルトラセブン」(円谷プロ・TBS制作、1967年-68年)がNHKBSプレミアムで毎週日曜朝に再放送されている。13日に第11話が放送されたが、次週は第13話。周知の通り、「第12話」は欠番だ。ウルトラシリーズのソフビ人形など幅広いジャンルのコレクターであるタレント・なべやかんは、よろず~ニュースの取材に対し、同作をはじめとするテレビや映画の「封印映像」について実例を挙げながら解説した。

 第12話「遊星より愛をこめて」は67年12月に放送された。登場する「スペル星人」は爆弾実験による放射能で侵された血液の代用を地球に求め、採血機能のある腕時計を女性や子供に無料配布したことから倒れる人が続出。最後は巨大化したスペル星人をウルトラセブンが倒す。放送当時は問題にならなかったが、70年に小学2年生向け学年誌の付録カードで「ひばく星人」と紹介され、抗議が殺到したことを受け、その後、再放送もソフト化もされていない。

 大人の視点で見ると、実相寺昭雄監督による前衛的な映像が堪能できる。「ウルトラマン」でフジ隊員を演じ、この回では人間に化けたスペル星人と交際する役の桜井浩子を追って、友里アンヌ隊員(ひし美ゆり子)とモロボシ・ダン(森次晃嗣)が公園を歩く中盤シーンでの逆光を生かした映像美に引き込まれる。米国で放送された同回の海賊版ソフトが出回り、現在はYouTubeでも見られているが、公式版の復活を願うファンの声が根強くあるのも事実だ。

 なべは「ウルトラセブン第26話の『超兵器R1号』に出てくるギエロン星獣も同じような話なんですよ。地球人が新しい超兵器を『生物がいない』と思った星で実験したら、実は生物がいた。自分の星を破壊されて『なんだコノヤロー』って地球に文句を言いに行ったら、逆にセブンにアイスラッガーで首根っこをぶった切られるという、そっちの方が問題だと思いますけどね」と比較する。

 その上で、なべは「スペル星人は『ひばく』という言葉が問題になったが、ギエロン星獣はそういう言葉を使っていないから放送されている。スペル星人は被爆して、かさぶたというかケロイドが白い体にあったから、それも問題になった。あれが怪獣系のビジュアルだったら問題なかった。ゴジラだって被ばくしているわけだけど、そうはならなかったわけで」と指摘した。

 さらに、なべは代表的な封印作として東宝映画「ノストラダムスの大予言」(74年公開)や円谷プロ制作のTBS系特撮ドラマ「怪奇大作戦」の第24話「狂鬼人間」(69年放送)を挙げた。

 「ノストラダムスの大予言」は社会現象となったベストセラーを元に、丹波哲郎、山村聡、志村喬ら重鎮も出演した文部省推薦の大作映画だったが、核戦争後に放射能で姿を変えた新人類の描写が問題に。「狂鬼人間」は、夫と息子を殺した犯人が心神喪失者として無罪となった社会ヘの恨みから、「脳波変調機」で人を一時的に心身喪失させて殺人をさせる女性が登場し、精神に変調をきたした人物描写などが封印理由として指摘されている。

 なべは「その内容で言えば『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06年公開の米国映画)が一時、放送禁止でしたが、リメイクされて劇場公開された。アメリカの核実験をやっている場所で避難しなかった家族が放射能で精神に異常をきたして人を殺しまくる映画でした」と補足。また、手塚治虫原作、市川崑監督の「火の鳥」(78年公開)について「若山富三郎さんが演じた猿田彦がすごいんですよ。アニメと実写によるエグい映画です」と絶賛した。

 「火の鳥」はCS放送や配信で視聴できるが、それもかなわない「お蔵入り」の日本映画は少なくない。記者が気になる作品群から一部を紹介すると、西村潔監督で中村敦夫主演の「夕映えに明日は消えた」は73年制作も諸事情で未公開となり、井筒和幸監督の「ガキ帝国 悪たれ戦争」(81年公開)は実在するファストフード店の描写が、若松孝二監督の「スクラップストーリー ある愛の物語」(84年公開) は主演女優の年齢がネックとなって封印されている。

 なべの母で女優の笹るみ子さんが出演した日米合作映画「大津波」(61年)も封印作だ。「ビデオやDVD発売もテレビ放送もなく、母は見たがっていたんだけど、見られないまま(16年に)亡くなり、その後、上映会があって家族で見に行きました。封印の理由は版権の問題だと思います」。さらに、なべは「逆に封印すべきだと僕が思うのは『仮面ライダースーパー1』(80-81年放送)。主演俳優が作品名を使ってファンから借金をしていたわけですから」と訴えた。

 いずれにせよ、「封印」によって実際の内容以上に期待や想像が膨らむ。それもまた、マニアの世界である。

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