「呪術廻戦」には日本らしい“手描き”アニメの魅力がある 宮昌太郎が語る

宮 昌太朗 宮 昌太朗
宮昌太朗
宮昌太朗

 『呪術廻戦』は、昨冬放映されたテレビアニメシリーズの中でも特に注目を集めた1本だろう。「週刊少年ジャンプ」で連載中の同名原作をもとに全24話がオンエアされ、その好評を受けて今冬、劇場版『呪術廻戦 0』の公開が予定されている。

 本作のアニメとしての魅力は、なによりもまず少年漫画らしいケレンの効いた原作を正攻法で映像化したことにある。主人公の虎杖悠仁は、優れた身体能力を活発・明朗な高校生。ある日、彼は呪いに襲われた学校の先輩を救うため、「呪いの王」の異名を持つ両面宿儺の指を身体に取り込み、以降、宿儺とともに生きることに。そんな虎杖の異常な能力を周囲が放っておくはずもなく、彼は教師・五条悟の導きによって、都立呪術高専の生徒として新たな人生を始めることになる。

 ひょうひょうとした性格とは裏腹に呪術師として抜群の腕前を持つ五条を筆頭に、虎杖の周りを取り巻く人々もみな実に魅力的だ。もともと「人間の負の感情から生まれる怪物=呪い」をモチーフにした作品だけに、全体のタッチはダークかつハード。キャラクター同士の激しく熱い感情を、クールな装いでくるんで差し出す本作の手つきはある意味、2000年代の少年漫画らしいストーリーテリングだろう。

 そして「正攻法」の映像化である。手描きの線がダイナミックに波打ち、画面いっぱいに飛び跳ねる心地よさ。第1話の虎杖・宿儺戦を初め、要所要所にアイデア満載のアクションシーンを導入し、かと思えば、例えば第1クール、オープニングの冒頭--電車の椅子にだらっと腰かけ、冷めた空気をまとう虎杖を捉えたカットから漂ってくる、クールな佇(たたず)まい。手描きの「絵」ならではのウソとハッタリを魅力に変換し、静と動を的確に使い分けるその演出は、日本のアニメの最も先鋭的な部分を見事に画面に結実させている。

 しかもそうした先鋭的な試みは、今や世界でも評価され始めている。先日、全米1598館で封切られた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は3日間で2110万ドルというヒットに。同作も、漫画ならではのストーリーテリングとアニメという表現の魅力ががっちりと手を組んだ一作だが、ほかにも現在第5シーズンが放映中の『僕のヒーローアカデミア』など、胸躍る作品は枚挙にいとまがない。

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