クリィミーマミだけじゃない!惜しまれる短命雑誌「キャロル」の充実度を振り返る

山本 鋼平 山本 鋼平

 今や〝クールジャパン〟と讃えられる地位に立った漫画。その発展に寄与しながら、はかなく使命を終えた数々の雑誌がある。今回は「キャロル」をピックアップ。今も根強い人気を誇るアニメ『魔法の天使クリィミーマミ』(制作スタジオぴえろ)とのタイアップで有名な同誌だが、それだけではない魅力を掘り下げてみたい。

 講談社「キャロル」は1983年3月(4月号)に創刊され、84年6月(7月号)を最後に休刊した月刊少女漫画雑誌。創刊第2号は83年5月(6月号)となぜか2カ月空き、休刊まで全15号が発刊された。小学校高学年以上を対象とした同社「なかよし」よりも年少を意識した姉妹誌で、創刊号では同年4月15日に開園した東京ディズニーランドの特集が組まれた。『魔法の少女クリィミーマミ』と同様に創刊号から最終号まで連載された作品は少なくないが、日本テレビ系で放送されたアニメ(1983年7月1日~84年6月29日)の終了とほぼ同時期に休刊を迎えたため〝クリィミーマミとともに始まり終わった雑誌〟の印象が強くなった。

 北川ゆうこ氏による漫画版はアニメ版を先取りする内容で、アニメ最終回のエンディングテーマ曲中に映された後日譚まで、最終号(雑誌は毎月15日発売)でしっかりと描かれた。タイアップの良さを生かしながら、堂々たる漫画版が展開されていた。雑誌表紙にはアニメイラストが起用される一方、84年3月号のように北川氏の漫画版が飾ったこともある。同年2月号では原ちえこ氏の『エリカの丘の物語』、同年4月号ではさこう栄氏の『3丁目のすずめたち』が表紙を飾るなど、他の作品は決して〝おまけ〟ではなかった。

 『VIVA!あかねちゃん』を連載した上原きみ子氏など、前述の原ちえこ氏を含め少女漫画家の実力者がそろった。アニメとのタイアップ作品では高畑梨絵氏による『とんがり帽子のメモル』も掲載。また、「週刊少年マガジン」で連載中の『The・かぼちゃワイン』がアニメ放映中でもあった三浦みつる氏は、SFラブコメ『ふたりでチェリー』を連載し、欄外では担当編集者から「三浦先生が広い仕事場の家に引っ越した」「新車を購入した」など、遊び心満載の情報を紹介されたりもした。

 最終号で全作品が最終回を迎えたのだが、特色としては、休刊に至るまでに悲壮感や焦燥感が全然漂っていないことが挙げられる。休刊直前の84年6月号では「ますます盛り上がる」と次号予告が打たれ、休刊号の表紙には「ハラハラ、ドキドキの夏号」と銘打たれた。編集部による休刊の挨拶は「これからも『なかよし』をはじめ、講談社のまんが雑誌をよろしくお願いします」と締めくくられている。当時の講談社の高い実力を物語るのだろうか。余力をたっぷり残して役割を終えたように思えた。(協力・明治大学米沢嘉博記念図書館)

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