松竹の挑戦…「文通」もできるアイドルキャラクタープロジェクト コロナ禍で着想

山本 鋼平 山本 鋼平

 日本エンターテインメント界の名門・松竹が、アイドルキャラクタープロジェクトに挑戦する。〝世界初!文通もできる〟を売りに、女性アイドル版『Princess Letter(s)!フロムアイドル』、男性アイドル版『Prince Letter(s)!フロムアイドル』を今月中に本格始動させる。歌舞伎や演劇、映画やアニメに続く新ジャンル開拓を狙う。同社開発企画部演劇企画開発室の玉置国大さん(32)に、意気込みを聞いた。

 舞台は全寮制でインターネットが禁止されている常和歌学園。男女各3人の〝アイドルの卵〟たちが、ファンと一緒に成長を目指す。便せんと封筒が同封された専用キット購入者は、文通が可能になる。

 昨年12月に同プロジェクトが発表され、これまでにアイドルが挑戦するポエトリーリーディングMVをYouTube等で配信。感想をツイッターに投稿したファンに、直筆の手紙が届くキャンペーンを実施。常和歌学園と〝協力〟して同プロジェクトを企画・運営している松竹の玉置さんは「〝本当に手書きだと思わなかった〟〝自分に向き合ってくれている〟といった、温かい感想をいただけました」と手応えを語った。文通ではファンの手紙内容は自由、アイドル6人それぞれの文体と筆跡で返信される。「アイドル活動の合間を縫って、頑張って手紙を書いてくれると思います」と期待を寄せた。

コロナ禍での思い

 同プロジェクトはエンタメ業界がコロナ禍に苦しむ昨春、構想が浮かんだ。「人と人が直接触れ合う機会が減る中、人のぬくもりを感じられるコンテンツがこれから重要になってくると思いました。文化を大切にする弊社なので、あえてアナログな手紙が適しているのでは、と考えました」。昨夏にゴーサインを受け、実現に向け走り出した。

 経験も大きかった。同プロジェクトは演劇企画開発室2~30代の若手社員で構成。アイドルや舞台俳優の応援に熱中した者は多い。「ファンレターを送るだけでも楽しかった。もし返事が届いたら、どれだけうれしいんだろう」と玉置さん。小学生時に行った文通の楽しさを覚えている者もいる。そんな思い出が、メンバーのモチベーションに結びついた。

 開発企画部ではさまざまな新ジャンルに挑んできた。昨年11月には京都・南座でアニメ「鬼滅の刃」と歌舞伎とのコラボ展示を実施。他にも中村獅童とボーカロイド・初音ミクが共演する「超歌舞伎」や、キティちゃんも出演する「KAWAII KABUKI」の歌舞伎監修など、話題性のあるプロジェクトも手掛けてきた。

 ただ今回の同プロジェクトは、松竹でも異例の挑戦。所属アイドル「雁矢よしの」のポエトリーリーディングMVは、配信1カ月で60万回を超える再生数を記録するなど、注目度は高まりつつある。将来的には他のメディアミックスなど、さまざまな展開が期待される。「今の時代に寂しさを抱えている方々に、笑顔や幸せを届けたい。彼女ら、彼らが、トップアイドルを目指して頑張って成長していく姿を見せたい。応援する先に、一緒に大きな夢を見られたらいいなと思います」と呼びかけた。

ちなみに、玉置さんは薬剤師の資格を持つ変わり種。いまだコロナ禍が収まらないからこそ「人を救うのは薬もエンタメも同じです」という言葉には、確かな説得力があった。

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